国際引越し三回目 日本からドイツ編
日本に帰国後、私は海外企業を相手にする職種についた。最初のうちはそれなりに楽しかったが、二年ほどすると会社のあり方や運営陣の方針に疑問を持つようになった。辞める時期が来ているな、と思った私は辞表を提出した。
その後縁あって辞めた会社の関連企業であるドイツの会社に転職が決まった。しかしそこに転職しようという計画は全くなかった。辞めてぶらぶらしていたら「ドイツにきてうちで働かない?」と声をかけられたので「じゃあ」と言ってそこで働くことに決めたのだ。そんな無計画な決定だったため、心の準備も荷物の準備もできていなかった。
季節は夏だった。刻々と近づく渡航の日に向けて、私は炎天下を自転車で走り回って役所や郵便局へ必要な手続きをしに行った。役所で海外転出届を提出し、日本にいる間分だけの年金と保険金の支払いをし、年度末までの支払いが発生する住民税は銀行口座から分割引き落としの手続きをした。郵便局には郵便物の転送手続きをしに行った。転送先は実家にしておいた。
本棚やベッドなどの大型家具はリサイクルショップに連絡して引き取ってもらった。もう読まない本や聞かないCDは中古本屋に売った。不要な衣類は近所の古着屋で引き取れる分だけ引き取ってもらって、残りは捨てた。当面必要だと思われる衣類をスーツケースに詰め込み、数冊の本とお気に入りのCDと入りきらなかった衣類は郵便局から一箱だけ送った。海外に荷物を送る場合、各25キロの箱が四箱位までなら郵便局から送るのが一番安い。国際引っ越しを扱っている引越業者や宅配便に見積もりを取ったが、料金は郵便局が一番安かった。だから郵便局にした。
その他に多数の本や雑多な小物類があったが、これらは考えた結果ひとまず実家に送って預かってもらうことにした。送るには高くつくし、かといって捨てるには惜しい。苦肉の策だ。そのうち生活が落ち着いて引き取る余裕ができたら、両親の口座に料金を振り込んで発送してもらうか、帰省の際に自分で発送手配をするか、どちらかにしようと思った。数鉢あった観葉植物も実家に送った。捨てるのはかわいそうでできなかったが、周りに引き取ってくれそうな人もいなかったのだ。
そうして私は再び日本を出た。