国際引越し二回目 イギリスから日本編

私はイギリスに六年以上住み、その後日本へ戻った。イギリスへ渡った時は未成年だった私も、とっくに成人して二十代の後半に差し掛かっていた。

個人的な意見ではあるが、人は十代の後半から二十代の前半にかけて生きていく上での基本的な事を学ぶと思う。働く時の心構え、人付き合いの仕方、友達との遊び方などがそうだ。私の場合その時期をずっとイギリスで過ごしていた。だから、祖国ではないと言え、この慣れ親しんで勝手が分かった土地を離れるのは本心ではなかった。だけど仕方がない。人は時として自分の希望と違う方向に進まなければいけない。

私はおとなしく荷物をまとめた。六年を越して住んでいた割りに、大した荷物はなかった。ダンボールで二箱だけだ。日本と違い、イギリスでは家具付き物件が多いのだ。入居した時に既に部屋にはベッドやクローゼットなどの最低限の家具が付いていて、さらに台所には冷蔵庫やガスコンロなどの家電製品や調理器具が揃っている。何が付いてくるかは物件によってまちまちだし、もちろん前の居住人が使用していた物なので新品ではない。だがこのおかげで私は生活用品一式をそろえる必要がなかったのだ。

それでも個人で購入した物、例えばドライヤーや炊飯器、鍋などは友達にあげた。まだ中身が残っていたが日本に持ち帰る気がないマニュキアなどもあげた。他に欲しい物があれば喜んで譲った。不要な衣類と靴はチャリティーショップに寄付した。

チャリティーショップとは、赤十字や癌基金などのような非営利団体が運営している中古品ショップだ。寄付された中古品の販売を通じ、運営母体の基金とする。売り物には衣類もあるし、本もあるし、食器もあるし、楽器もあるし、何でもある。チャリティーショップはどこにでもあり、イギリスで引越しをする人は、チャリティーショップにまだ使える不用品を寄付すると言う形で処分する事が多い。

また日本人コミュニティーの間では「帰国売り」と言うものがあった。帰国に際し、まだ使える物品を安く販売するのである。自転車やテレビ、デスクトップ型パソコンなど、様々な物が二束三文で取引される。買うほうは当然安くいいものを手に入れることができるし、売るほうは不用品の処分といくばくかの引越し資金の調達ができる。

私は帰国売りはせず、不用品は譲渡か寄付という形で処分した。単にその方が簡単だったのだ。